に続いてここからは、万三さんホームページご案内係にバトンタッチして、ご案内係から「ひとこえ」。
「春です。桜です。お花見です。満開の桜にくつろいで、さあいよいよラストスパートです」
・・・というわけで、以下、万三さんへのエールを込めて。
さくら・サクラ・桜
一口に「さくら」といっても、寅さんの妹も「さくら」、露天商のお仲間もサクラと色々ですが、今回は、春ともなれば咲き誇り、その下では花を愛でる人々の宴が催されるほうの桜の話。
そもそも桜
さて、その桜。桜を学術的にいうと「バラ科サクラ亜科サクラ属」のうち、梅・桃・スモモを除く落葉喬木となります。
ちなみに、「喬木」がどんなものかというと、
だいたい人の背丈以上の高さの樹木。主幹と側枝との区別が概ね明らかで、葉は広葉または針葉、落葉するものと常緑のものがある。
と広辞苑にあります。
後半の「葉は広葉または針葉、落葉するものと常緑のものがある」のほうは要するに何でもありなのね…でしかありませんが、前半の「だいたい人の背丈以上の高さの樹木。主幹と側枝との区別が概ね明らか」は、桜の姿を思い浮かべると“なるほどね”と納得できるものがあります。
この桜。仲間としては中国大陸やヒマラヤに数種類があることが知られていますが、日本にもっとも種類が多く、ヤマザクラ、オオシマザクラなど9品種を基本に、変品種を合わせると100種以上の桜が自生していることで、日本イコール桜の花。日本の「国花」が桜なのも、むべなるかな、です。
歌の中での桜
古来より「花」といえば桜を指し、和歌などに詠まれ親しまれてきた桜。小野小町(おののこまち)の歌として知られる、
花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに
の「花」がまさにその桜です。
同じく『小倉百人一首』には『古今集』の選者として知られる紀友則(きのとものり)の
ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ
が有名ですが、この「花」もまた桜なのです。
暮らしの中の桜
歌の中で取り上げられてきただけではありません。「桜雨」「桜色」「桜烏賊」「桜魚」「桜海老」「桜貝」「桜紙」「桜狩」「桜鯛」「桜肉」「桜結」「桜餅」・・・と、まだまだたくさんあります。桜を冠した言葉がこんなに多いことからも、人々の暮らしの中で桜が親しまれ続けてきたことがうかがわれます。
染井吉野と山桜
今でこそ桜といえばソメイヨシノ(染井吉野)が代表選手ですが、昔はそうではありませんでした。『小倉百人一首」の伊勢大輔(いせのたいふ)が歌う、
いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に にほひぬるかな
を聞いて、満開のソメイヨシノを思い浮かべる人も多いかと思いますが、この桜は、実はヤマザクラ(山桜)だったのです。
では、ソメイヨシノはと申しますと、江戸時代末期、江戸は駒込村字染井の植木屋が、桜の名所「吉野山」にちなんで「ヨシノザクラ」の名前で売り出したものです。でも、吉野山のヤマザクラと混同されてしまうことから、ヤマザクラと区別するためソメイヨシノと言うようになりました。
今でも地名の中に「吉野」は残っておりまして、1872年(明治5年)に旧武家屋敷を解体し都営霊園として開いた東京都豊島区駒込5丁目の「染井霊園」がそうです。町内会の掲示板にも「染井よしの町会」と記されています。
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園芸品種としての桜
ソメイヨシノでは、2枚の葉が外側に曲がり普賢菩薩(ふげんぼさつ)の乗っている象の鼻に似ているために名付けた普賢象、八重咲きの関山(かんざん)、花心から1本の葉化したメシベが出る一葉、八重で淡紅色の松月(しょうげつ)などが代表的な園芸種です。
また、ソメイヨシノはオオシマザクラとエドヒガンの交雑種といわれ、日本で生まれたとされていますが、韓国の済洲島に自生状態のものあることが知られており、原産地や由来については色々な説があるようです。
花の命は短いか
桜の花は、パッと咲いてパッと散っているように見えがちですので、そんな生き方の代名詞のようにして使われることがけっこうあります。
でも、実はそうではなく、桜の花は「パッと咲いて」いるように見えても、全部の花が一斉に咲き出すのではなくて一週間くらいかかって徐々に咲いています。同様に、散るのも一週間くらいかかって、徐々に徐々に散っています。従って、昨日は風が強かったから、とか、夕べの雨で今年の桜はもう終わり…などということはなく、雨が降ろうが風が吹こうが、一週間という時間差を置いて開花している桜には思ったほど影響を及ぼしません。
それはそうです。一度の風雨で「パッと」散ってしまうものなら、桜はこの自然界で生き残ってこれなかったでしょう。徐々に咲き、そして徐々に散る。これもまた、桜という種が生き残るための、自然界の選択だったのです。そして、人間もまた、徐々に徐々に花ひらいていくのです。
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